Slow Work System
Slow Work System ワード・スペース
そぼものがたり@
小学校(しょうがっこう)6年生(ろくねんせい)()わりの(ころ)

祖母(そぼ)()()ちの先生(せんせい)から女学校(じょがっこう)()かないかと提案(ていあん)を受けた。

祖母は(うち)(かえ)ると早速(さっそく)(おや)にそのことを(はな)した。

すると。

女学校はお(かね)がいるから高等科(こうとうか)(ほう)()いだろうという(こと)になり、

小学校卒業後(そつぎょうご)、祖母は高等科に(はい)った。

高等科に入るとすぐ、

近所(きんじょ)の〈金持(かねも)ち〉から祖母に子守(こもり)()てほしいと、両親(りょうしん)依頼(いらい)があったらしい。

両親は、まずは本人(ほんにん)()いてみないと分からないと(こた)えた。

すると。

近所の〈金持ち〉は祖母に()うたびに「子守に来てくれ」「子守に来てくれ」と言い(つづ)けた。

祖母が言うには。

その〈金持ち〉は、子守に来ればいかにも良いことがあるふうに話しをしており、

祖母はそれを(しん)じて一学期(いちがっき)で学校をやめて〈金持ち〉の家に奉公(ほうこう)した。

(ただ)し、祖母は行けば「良いことがある」と(おも)ってその(ため)だけに奉公に()たわけではない。

その(ころ)、祖母の父親(ちちおや)借金(しゃっきん)保証人(ほしょうにん)を受けたせいで、田畑(たはた)(やま)(すべ)()()さえられて

()()禁止(きんし)となっており生活(せいかつ)(くる)しい時期(じき)だった。

近所の〈金持ち〉は、その借金の(けん)仲介人(ちゅうかいにん)をしていた。

そんな背景(はいけい)手伝(てつだ)って、祖母は奉公(ほうこう)()めたのだった。

最初(さいしょ)(はなし)では1ヶ月1円50(せん)給料(きゅうりょう)約束(やくそく)されていたが、祖母にも実家(じっか)にも直接(ちょくせつ)支払(しはら)いはなかった。

その事は、(のち)に祖母の母親(ははおや)

「お(かね)(もら)ったことはなかったから借金(しゃっきん)利息(りそく)(なに)かにしたのだろう」と言っていたらしい。

おそらく、この時代(じだい)には(めずら)しい出来事(できごと)ではない。

祖母が4年間の奉公を()えて実家に帰ると、今度(こんど)嫁入(よめい)(ばなし)(なが)()んできた。

その話は、祖母の奉公先(ほうこうさき)の近所の〈金持ち〉からのものだった。

結局(けっきょく)。祖母は奉公先の仲介(ちゅうかい)で18才の9月頃に「嫁入り」した。

しかし。

嫁入りはしたが。

祖母はどうしても裁縫(さいほう)(なら)いたくて、高千穂(たかちほ)に行きたいとばかり(かんが)えていた。

高千穂に()叔母(おば)自宅(じたく)裁縫教室(さいほうきょうしつ)をしていると()いていたからだ。


翌年(よくとし)の4月頃。

祖母の(おとうと)(あし)に出来物ができて手術(しゅじゅつ)をすることになり、

母親(ははおや)一緒(いっしょ)()()入院(にゅういん)しなければならいので、

しばらく手伝(てつだ)いに()てくれないだろうかと実家からの便(たよ)りが(とど)いた。

嫁入り(さき)了承(りょうしょう)()て、祖母はしばらく実家(じっか)(かえ)った。

そして。

祖母は(なん)とかしてこの機会(きかい)に高千穂へ行きたいと考えていた。

毎日(まいにち)、そのことばかりが(あたま)にあった。

そんなある日。

父親(ちちおや)が“(ちゃ)出来(でき)たから、茶を(とど)けに高千穂に行く”と言うのを()いた。

その(とき)祖母の(こころ)の中は高千穂までの(みち)(おぼ)える策戦(さくせん)でいっぱいだっいたが、

祖母(いわ)く《()らんふり》をして

「高千穂に一度(いちど)行ってみたいけど一緒(いっしょ)に行ったらいかん?(行ったらだめ?)」と聞いてみた。

父親は簡単(かんたん)に「いいよ」と言ってくれた。

かくして、祖母の策戦は前進(ぜんしん)した。

祖母の記憶(きおく)では、父親と一緒に諸塚山(もろつかやま)(ふもと)(とお)って高千穂に()いたのは午後(ごご)()(ごろ)だった。

祖母の印象(いんしょう)では、高千穂は非常(ひじょう)(かん)じのいい人ばかりだった。

そこで。

祖母は(つぎ)策戦(さくせん)実行(じっこう)(うつ)気持(きも)ちを(かた)めて実家(じっか)(かえ)った。

実家に帰るとすぐに、高千穂の叔父(おじ)手紙(てがみ)()いて出した。

内容(ないよう)は、

「嫁入りさせられたけど、(もう)行きたくないから、仕事(しごと)使(つか)ってくれないでしょうか?」

というものだった。

それからしばらく()った(ころ)

父親が昼食(ちゅうしょく)をとる(ため)(そと)から帰っていた(とき)、父親(あて)に高千穂の叔父から手紙が(とど)いた。

祖母は自分のことが書かれているのではないかとドキドキしていた。

が。

父親は手紙を()()えても何も言わず、状差(じょうさ)しに手紙を入れて出ていった。

その(あと)祖母は、状差しに()()まれた手紙を《そっと》()き出し読んでみた。

内容(ないよう)はやはり祖母のことだった。

そこには、祖母から叔父宛に届いた手紙の内容が書いてあり、

(つづ)いて“そんなに(嫁入(よめい)(さき)に)行きたくないなら、やらなくても()いのではないか?”

(うち)高千穂(たかちほ))に()れば仕事(しごと)はあるよ”と書かれていた。

それを読んだ祖母は安心(あんしん)して、高千穂に行く事を心に()めた。

父親が何も言わなかった事を「見逃(みのが)し」の(しるし)()()り、家出(いえで)計画(けいかく)したのだ。

祖母は日々(ひび)何食(なにく)わぬ(かお)をしながら、

祖母(いわ)く《()らんふり》をしながら家出の準備(じゅんび)をしていた。

だがひとつだけ、(なや)みがあった。

あの、(ひる)でも(くら)いような高千穂までの(みち)のりを、どんなふうにして()げるか?という事だった。

そんな()り。

親戚の(いえ)奉公(ほうこう)に来ていた青年(せいねん)が、

徴兵検査(ちょうへいけんさ)(ため)近所(きんじょ)の青年と一緒(いっしょ)に高千穂へ行くことになったという話を小耳(こみみ)(はさ)んだ。

《これと一緒(いっしょ)に行こう》

祖母は内心(ないしん)で決めて日時(にちじ)(くわ)しく調べるなどして準備を(すす)めた。

その(ころ)

(とつ)ぎ先からの便りが届いた。

田植(たう)えの準備で(いそが)しいから、そろそろ(かえ)って来てくれないか”と。

祖母は、高千穂へ行く前日(ぜんじつ)夕方(ゆうがた)()わせて、その日に帰るからと返事(へんじ)をしておき、

実家でも、その日に嫁入り先に帰ると話をしていた。

当日(とうじつ)、家で仕事をしていた(いもうと)に、嫁入り先に帰ると言って夕方(5時頃)実家(じっか)を出た。

実家を出る(さい)戦死(せんし)した(あに)(つくえ)()()しにあった50銭玉(せんだま)()を《だまって》()りた。

実家を出た祖母は、徴兵検査(ちょうへいけんさ)に行く久一(ひさいち)という青年のところへ行った。

青年は、(かわ)(くち)地名(ちめい))の叔母(おば)さんの家に同居(どうきょ)しており、

叔母さんに「明日(あした)久一と一緒(いっしょ)に高千穂に行くから、今夜(こんや)()まらして」と言うと、

簡単(かんたん)に「いいよ」と言ってくれ、翌朝(よくあさ)弁当(べんとう)まで(つく)ってくれた。

祖母は叔母さんに、実家の両親から(あし)手術(しゅじゅつ)入院(にゅういん)している(おとうと)(ため)

“高千穂の御大師(おだいし)さんにお(まい)りに行って()い”と言われたと、(うそ)をついていたのだった。


〈つづく〉


【20090126/21:55】







ワード:メニュー


トップページ
Copyright (C) 知民 2006-today All Rights Reserved.